打者走者と捕手の交錯に対して守備妨害をコール
先日コラム(明日球審できるかな – 村林法律特許事務所)を書いた予定試合は、グラウンドのコンディション不良により中止になってしまった。しかし、明日また球審予定の練習試合があり、晴れ予報である。
直近で球審をしたのは、2週間前である。球審は、ストライク・ボールだけを判定すればいいというものではなく、野球は色々なプレイが起こる。直近の試合でも、目にすることが多くはないプレイ・ジャッジが初回からあったので紹介してみる。
一死二塁。右打者が、内角高めのボール球をバントし、捕手前に緩く転がった(エンドランがかかっていたかもしれない)。
打者は、のけ反ってバランスを崩しながらバントしたため、一塁へのスタートが遅れた。
捕手は、素早く打者走者の前に出て打球を処理し、三塁への送球態勢に入った。
遅れて一塁へスタートした打者走者は、故意でなく捕手をよけるつもりだったのだろうが、捕手の前に回り込むような走り方をしたため、打者走者と送球体制の捕手が交錯した。
捕手は、三塁に送球することができなかった。
このケース、球審の私は即座にタイムをかけ、守備妨害・打者アウトをコールし、走者を二塁に戻した。
野球規則では、(打者)走者が、打球を処理しようとしている野手の守備を妨げた場合、故意かそうでないかを問わず、守備妨害となる(6.01a(10))。守備優先と呼ばれるルールである。
しかし、6.01a(10)原注には、次のような記載もある。「捕手が打球を処理しようとしているときに、捕手と一塁へ向かう打者走者とが接触した場合は、守備妨害も走塁妨害もなかったものとみなされて、何も宣告されない。」
これは、いくら守備優先といえども、打者が打ってすぐに一塁に走り出す権利くらいはあろうと、例外的にイーブンにしているという規定である。そうすると、今回のように、打者走者が出遅れて、明らかに捕手が先に守備態勢に入っているような場合は、もはやイーブンではなく、打者走者の方が捕手の守備を避けて一塁へ向かうべきであって、交錯・接触があれば、原則どおり守備妨害とするのが妥当と考えた。
上記判断を条件反射的に行い、私は、「タイム!タイム!(打者走者を指して)ザッツ・インターフェアレンス!ユー・アウト!(三塁に達した走者を指して)ユー・バック・トゥ・セカンド!」とコールした。6.01a(10)の原注は知っていて打者走者と捕手の出合頭はナッシングという印象を持っている人も多く、揉めやすいプレイであろう。タイムをかけて強引にプレイを止めた以上後戻りはできない。練習試合ということもあり、異議や不服の声はなかったが。
後日ベテランのアマチュア審判員に確認したが、そのジャッジで合っているというコメントをいただき、安心である。
プレイがひと段落してから熟慮したのではなく即座にジャッジできたこともあり、少し自信につながるジャッジでもあった。