強盗未遂・窃盗事件で、控訴審で大幅減刑を得た事案
状況
被告人は、夜間に、複数の共犯者と施錠中の店舗に侵入して金品の入った金庫を窃取した窃盗事件と、強盗を企て凶器を持って被害店舗に押し入ったものの、被害者らの反撃に遭い遂げなかった強盗未遂事件の2件で逮捕・起訴されました。 上位の共犯者に駆り出された立場で、主犯格ではなかったものの、親族等の身元引受けがなく、被害弁償もできなかったことから、一審判決は、3年を大きく超える実刑でした。
しかし、一審判決の後、かつての雇用主から弁護人に連絡があり、身元引受けや弁償資金の貸付けを申し出てくれました。
当事務所がしたこと
雇用主と面談を行い、被告人の社会復帰後、身元を引受け雇用する意思を確認し、弁償を資金の貸付けを受けました。また、控訴審で情状証人として出廷していただく約束を取り付けました。
早速、窃盗事件について、被害弁償を完了させました。
控訴趣意書には、一審判決の量刑が重すぎて不当であることを指摘すると共に、原判決後に、被害額の大きい窃盗事件について被害弁償をしたこと、社会復帰後の帰住先や就業先が確保されたため、これらの事情も考慮すれば、現時点では執行猶予が相当になったと指摘されました。
控訴審の裁判の期日では、被害弁償に関する報告書、雇用主の証人尋問、被告人質問の3つの事実取調べ(新しい証拠の提出)を請求し、認められました。
得られた結果
控訴審判決で一審判決が破棄され、執行猶予には至らなかったものの、刑期が1年近く減刑されました。 なお、一審判決が変更されたため、一審判決から控訴審判決までの約5カ月間の未決勾留期間が、全部刑期に算入されるので、仮釈放等も考慮すると、服役期間が2年を下回る可能性が高くなりました。
コメント
一審判決では、被害額の大きい窃盗事件の被害弁償がされていないことが重く見られた上、被告人の更生環境も整っていないから、相当期間の実刑になってしまいました。窃盗等の財産犯において、被害弁償の有無・程度は、量刑の重さに直結します。被害弁償のない一審判決時の状況と、被害弁償と更生環境の調整がされた控訴審での状況が異なることは明らかであり、高等裁判所は、このような状況の変化を斟酌していただき、大幅減刑に繋がりました。
なお、複数犯での計画的な侵入型の強盗事件は、量刑傾向に照らして、執行猶予を得るのが非常に厳しい類型です。