弁護士コラム

学校のいじめ対応に関する問題1(教職員向け)

(問)
中学校(高校としてもよい)内で次の事例が発生した。

⑴ 生徒らによる、①から⑨までの行為は、いじめ防止対策推進法の「いじめ」に該当するか。
⑵ 学校がそれぞれの事案を認識した場合に取るべき対応を検討せよ。

なお、関係生徒は、いずれも自校の生徒とする。

(事例1)
生徒Aは、クラスの中で成績が芳しくない方であり、授業中、教員の質問に対し正確に回答できないことが多々あった。
同じクラスの①生徒Bは、ツイッターに、「Aは今日も授業中に頓珍漢なこと言ってたわ、本当に頭悪い笑」などとツイートした。同じクラスの②生徒C、Dは、ツイートに「いいね」をした。ツイートは、Aの目に入ることとなり、Aはショックを受けた。

(事例2)
野球部では、練習開始後まもなくキャッチボールをするが、誰と誰が組むかは決まっていない。実力の近い部員同士が自然とペアを組み、キャッチボールをするようになっていた。野球初心者の1年生部員Eは、狙ったところにボールを投げることができず、暴投が続いたため、相手は何度もボールを拾いに行く羽目になった。
そのような状況が続いたため、③1年生部員Fらは、Eとキャッチボールをしても練習にならないと考え、Eを避けるようになった。Eは、キャッチボールの相手が見つからず、一人で寂しそうに、防球ネットにボールを投げる練習をするようになった。

(事例3)
生徒Gは、周囲からお調子者と呼ばれるような性格であり、日頃から同級生を冗談で馬鹿にするような言動をすることがあった。④Gは、ある日、同じクラスの生徒Hに対し、Hの口癖を真似するなどしてからかった。⑤Hは、これに腹を立て、Gを突き飛ばしたため、⑥その後GとHは掴み合いになった。結果的に、Gは首に引っかき傷を負い、Hは手首を捻挫し、共に1週間ほど痛みが続いた。なお、教員が事情を聴いたところ、Gは自身の言動が軽はずみだったと、Hは手を出したのはよくなかったと、共に反省している様子だった。

(事例4)
男子生徒Iは、同じクラスでかねてから好意を抱いていた女子生徒Jに、校内の人目につかない場所で交際を申し込んだ。しかし、⑦Jは、Iに対して特別な感情を抱いていなかったため、すぐにこれを断り、その場から逃げるように立ち去った。さらに、⑧Jは、同じクラスで親しい友人である女子生徒Kらに、グループLINEで、「Iに告られたけど秒で振ったわ」「全くタイプちゃうわ」などと送信し、これに対しKらは、「わかる」「めちゃ気まずいやん、しばらく関わらんとこ」などと返信した。⑨J、Kらは、翌日から、Iとの会話や関わりを目に見えて減らした。
Iは、翌日、Jに交際を断られたショックで学校を欠席した。翌々日には登校したものの、Jに交際を申し込んだという噂が広まっていることを知った上に、Jに加え、Kらにも距離を置かれていると感じ、再び体調が悪くなり、欠席しがちになった。

(参考法令)
いじめ防止対策推進法
2条
1 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、該当児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
2 この法律において、「学校」とは、…小学校、中学校、…高等学校…をいう。
3 この法律において「児童等」とは、学校に在籍している児童又は生徒をいう。

次回の記事で、問⑴の解答・解説を述べる。