弁護士コラム

最終準備書面について

今日のコラムは、最終準備書面に対する考え方である。最終準備書面とは、人証調べの終了後に提出する一審で最後の準備書面のことである。
私は、これまで2パターンの最終準備書面を作成してきた。

1つは、人証調べを踏まえて、これまでの主張の総まとめを記載するタイプの最終準備書面である。司法修習の時に、司法研修所で最終準備書面の起案を指示された際に起案するのはこのタイプである。争点ごとに、従前から準備書面で主張してきた主張構造を再度示し、人証調べの結果をドッキングさせる。従前の主張を繰り返す部分もかなりあるため、分量(ページ数)が相当量になる。要は裁判所に対して、こういう判決を書いてくださいよ、と促すのである。

もう1つは、証拠調べの結果(主に、反対尋問で引き出した事実や補充質問及びその回答)とその評価のみを記載するタイプの書面である。これは、従前の主張の繰り返しがないため、分量はコンパクトにまとまる。

どちらが適切かは一概には言えないが、感覚としては、こちらが勝ち筋だったり、従前から要点を捉えた主張を提出できていたと感じられたりする場合には、後者のタイプの書面を作成しているような気がする。確かに、争点整理の段階からもっともな主張ができていれば、わざわざ最後に繰り返す必要はないだろう。そして、新しい主張や証拠を出すわけでなく、証拠評価に終始するため、わざわざ最終準備書面を陳述する必要はなく、尋問期日で弁論を終結してもらい、いわゆる参考書面として提出すれば十分だと考える。このあたりの話は、岡口基一・中村真ほか『裁判官!当職もっと本音が知りたいのです。』76頁から78頁あたりに記載されている。

前者のタイプで総まとめをした事件を振り返ると、やはり自信がないなと感じていた部分があった。こっちの理も採用の余地はあるから、最後に筋書きを聞いてくれよ、という意識があったように思う。どっちに転ぶかわからない事件では前者のタイプは有効なのかもしれない。

ただ、書き手・読み手のお互いの労力を考えると、前者のタイプが基本でありたいなと感じる次第である。