司法試験「法科大学院等別合格者数等」の分析
最初に断っておくと、現役の法学部生、あるいは既に法学部・法曹に強い関心を持っている高校生、すなわち、若くして司法試験・法曹を志す者の視点で分析する記事である。もっとも、社会人受験者等、それ以外の属性の者を否定的に評する意図は全くないのでご理解いただきたい。
法務省が毎年出しているものであるが、「法科大学院等別合格者数等」という資料がある。
001405790.pdf (moj.go.jp)
資料1枚目に、「法科大学院等別合格者数等」というデータがあり、法科大学院別の受験者数や合格者数等が載っている。報道で出る、●●法科大学院の合格率は…という情報は、このデータを基にしている。
しかし、私は、法学部生の頃から、このデータにはさほど関心を持っていなかった。私が関心を持つのは、資料3枚目・4枚目の「法科大学院別人員調(修了年度・既修・未修別)」というデータである。
ここには、各法科大学院の卒業生を卒業年度・既修/未修に分類して、受験者数や合格者数が載っている。
私が着目するのは、今年であれば、令和4年卒業かつ既修者の合格者数や合格率である。要するに、法科大学院をストレートで卒業した場合、司法試験受験1回目でどれくらい合格するのかがわかる。
例えば、
大阪大学法科大学院 受験者51、合格者39(合格率76.4%)
京都大学法科大学院 受験者91、合格者72(合格率79.1%)
神戸大学法科大学院 受験者45、合格者29(合格率64.4%)
早稲田大学法科大学院 受験者103、合格者58(合格率56.3%)
中央大学法科大学院 受験者42、合格者24(合格率57.1%)
もの既修者が1回目で合格してくる。
他方、報道でよく見られる法科大学院全体の合格率は、
大阪大学法科大学院 受験者182、合格者78(合格率42.9%)
京都大学法科大学院 受験者275、合格者188(合格率68.4%)
神戸大学法科大学院 受験者146、合格者71(合格率48.6%)
早稲田大学法科大学院 受験者389、合格者174(合格率44.7%)
中央大学法科大学院 受験者229、合格者90(合格率39.3%)
である。
※今年から在学中受験が可能になったため、従来の「予備抜け」層が入ってきて、法科大学院全体の合格率は上がっている。
報道の影響で後者のデータが独り歩きして、若い者の間でも、司法試験は狭き門だという印象が広がっているのではないかと懸念する。無論、法科大学院入学までの過程もあり、甘いものではないが、法曹への志を持っているならば、チャレンジする価値はあるし、目標に到達する可能性は十分ある。
若くして法曹を志し、法科大学院の門を叩いた者が、どれくらい目標に到達するかを図る上で参考になる指標は、前者のデータである。法学部に入ったばかりの学生や、法学の道に関心のある高校生は、データをしっかり分析して、はなからチャレンジせず法曹の道を諦めるようなことはしないように願いたい。
※在学中受験などの制度改正があり、今後データの読み方も変わってくる。
※1回で合格できなければ終わりと言っているわけではない。受験回数を重ねるにつれ合格率は下がるが、2回目以降で合格して、立派に活躍されている人はいくらでもいる。