訴訟上の和解における「調整金」
不法行為に基づく損害賠償請求においては、損害額の約10%を弁護士費用相当額として加算でき、不法行為の日から支払われるまで、年3%の遅延損害金が発生する。
訴外で示談する場合には、弁護士費用と遅延損害金はカットされるのが通常である。
訴訟になり、裁判所から和解案が提示される場合、弁護士費用と遅延損害金の一部が「調整金」という名目で加算されることがある。
例えば、損害額が139万と認定された場合、11万円(約8%)を調整金して加算して150万円の和解案といった具合だ。
私の経験上、当地では、地裁の場合は調整金が付くことが多く、簡裁の場合は調整金が付くのは稀である。
訴額が低く、そんな細かい点をいっても、という価値判断なのだろうか。
私が地裁か簡裁のいずれに提訴するか悩む場合、実は、この調整金欲しさも選択の考慮要素にしている。(無論、民訴法17条2項の自庁処理の上申書にそんなことは書かないが。)
この調整金、和解において色々と使い勝手の良さがある。
例えば、むち打ちで6カ月で保険会社から治療費を打ち切られた交通事故の被害者が、結局8カ月通院して訴訟提起し、必要な治療期間が6カ月か8カ月かが争点になったとする。
赤い本によると、通院慰謝料は、6カ月で89万円、8カ月で103万円である。
そこで、裁判所は、保険会社の主張どおり6カ月で症状固定に至ったとの心証を持ったとしよう。次のような和解案が考えられる。
・治療費については、実費である上に健康保険切替後はさほど高くならないことを考慮して、8カ月分認める。
・通院慰謝料は6カ月の通院を前提に算定する。
・2ヵ月分の治療費と、6カ月分の通院慰謝料の合計が約90万円
・事故から1年以上経過していることを考慮し、これに調整金(約10%)を加えた100万円での和解が相当である。
被害者からすると、訴外で通院8カ月前提で示談したのと、大差ない解決ができる。訴外の場合、保険会社は中々赤い本100%を認めないことを踏まえると、むしろ高くなった可能性もある。