弁護士コラム

諦めないこと

先日、2023年の初めに受任した最古参の交通事故の訴訟が終了した。(以下、本質を変えない程度に事案を改変する。)

治療が終了して、後遺障害の事前認定で非該当判断を受けたという悪いタイミングで受任した。

・そこそこ大きな事故で、手指の骨折の診断を受けた
・ただし、XpやCTでの骨折の有無は、見る人によって判断が分かれる程度である
・通院期間は6か月未満で症状固定
・通院期間の後半は、月1程度の経過観察が主

とかなり厳しい条件が揃っているが、せめて14級がないと依頼者が可哀想である。

医師(主治医・読影医)の意見書や照会書の取得、カルテで症状の一貫性の立証、事故態様の立証、就労への支障への立証とやれることを重ねて、後遺障害異議申立て、紛争処理機構への調停申請と手続きを経るも、結論は変わらない。事故から2年が経過し、苦しい状況にはあるが、ここまでくれば最後まで諦めたくないという依頼者の意向もあり、訴訟まですることとした。管轄が複数あったので、裁判官の経歴や過去の判決を検索するなどして、この方なら何とかしてくれるかも、と考えた末に一人支部の裁判所に訴訟提起した。

双方の主張・立証にさほど時間はかからなかったが、自賠責の判断を覆すだけの立証ができるかといわれると疑問であった。それでも、裁判所・訴訟代理人の調整もあり、後遺障害部分についても一定の金額を認める形で和解ができた。
14級相当には至らないものの、紛争処理機構の結果をみてそこで諦めていた場合と比較すると、100万円近い上乗せができた。裁判所だけでなく、相手方代理人の調整にも感謝である。

保険会社的にはそれなりに重い事故という認識があったようで、訴訟前の傷害部分の示談提示も、保険会社の基準としては通常よりも加算されていた。後遺障害部分を一定程度認める和解にもつながったのではないか。
当然ながら、どんな事案でも訴訟をすれば14級が取れるというものではない。