加害者が無保険の交通事故対応
久しく更新をサボってしまった。
今年も交通事故案件を安定して受任しており、件数は本日時点で32件である。その中には、加害者が任意保険に入っていない案件が4件ある。
過去の案件も含めて特徴的なのは、いくつか法律事務所に相談しようとしたものの、加害者が無保険ということで依頼を断られてしまい、うちに来たという経緯の件が散見される。三重県内ではあるが、地元で断られてわざわざ遠方から当事務所を訪ねていただいた件もある。
法律事務所側の事情を説明すると、加害者が無保険の事案が敬遠されがちなのは、弁護士特約で支払われる報酬は、加害者がきちんと任意保険に入っていようと無保険だろうと変わるものではなく、後者は事件処理の手間が遥かに多く、費用対効果が見合わないのが実情である。もう1つは、訴訟で判決まで得たとしても、無保険の加害者の場合通常資力に乏しく、判決で命じられた金額の支払いが受けられないことも珍しくない。労力をかけても依頼者満足度が高くなく、それなら最初から控えておこうという意識から、無保険事案はお断りという対応になってしまう。
このような実情は、私としても仕方ないと思う部分はある。しかし、無保険事案で、弁護士介入によって100%でなくても何とかなるかもしれない、という事案は意外とある。そのため、当事務所は、無保険だから一律お断りという対応はしておらず、相談対応は可能である。
物損は、加害者無保険なら車両保険を使用する方向にした方が、色々な意味で得策である。車両保険に入っていないなら・・・(以下略)20万円以下なら何とか回収できるかもしれないけれど。
無保険事案で何とかなる可能性が高いのは、人身事案で、かつ後遺障害が残らない事案(治療期間が概ね半年以下のむちうち・捻挫など)である。
むちうち・捻挫で半年(月10日×6か月)通院した場合、健康保険使用の場合、治療内容にもよるが治療費・文書料が10万円ないし15万円ほどになる。
そうすると、人的損害としては、治療関係費15万円、傷害慰謝料が89万円、通院交通費が1万円だとすると、合計105万円になる。これだけみると、自賠責保険の限度額120万円に収まっている。(休業損害がそれなりに発生していると限度額を超えるかもしれない。)
ところで、この場合に自賠責基準を算定すると、治療関係費15万円、傷害慰謝料51万6000円(4300円×60日×2)、通院交通費1万円の合計67万6000円である。自分の保険に人身傷害保険があれば(四輪の場合はない方が珍しい)、約款にもよるが、この事案だと自賠責基準と同等の67万6000円の支払いを受けられるのが通常である。人的損害のうち最低限の部分は填補される。
被害者に生じた損害105万円と67万6000円の差額の37万4000円を加害者に請求することになる。加害者の資力がダメであっても、自賠責保険会社を被告とする訴訟を提起して、裁判所が人的損害105万円を認定されれば、差額の37万4000円が自賠責保険から支払われる。
自賠責基準は67万6000円なのに、なぜそれを超える支払いを受けられるのか疑問に思うかもしれないが、裁判所は、自賠法16条の3が規定する支払基準によることなく、自ら相当と認定判断した損害賠償額の支払いを命ずることができる(最一小判平成18年3月30日民集60巻3号1242頁参照)とされている。
治療期間が半年までいかず4か月程度であれば、家事休業損害などを加えても、自賠責の限度内で訴訟基準の損害全部が填補される可能性が十分ある。なお、怪我の程度にもよるが、むちうち・捻挫の場合、4か月分の家事休業損害は20万円から40万円程度になるイメージである(裁判官によってかなり幅がある・・・)。
というわけで、自賠責保険相手の訴訟の手間と時間は大きいけれど、後遺障害が残らない人損事案なら、加害者が無保険であっても、人身傷害保険と弁護士特約で何とかお力になれる可能性が高い。殊更負担感があるわけではなく、ある程度定型的な処理も可能なので、今後も相談・依頼対応をしていくつもりである。