弁護士コラム

自賠責への被害者請求と印鑑証明

自賠責保険への被害者請求。
私は、後遺障害申請は原則として被害者請求による方法を採っており、今年も何件か申請した。

被害者請求は、必要な資料を自分で収集・作成する必要がある。
必要書類の中には、以下のものが案内されている。
・被害者作成の委任状
・被害者の印鑑登録証明書
・受任者(弁護士)の印鑑登録証明書
委任状は、事件を受任するに当たり、通常作成してもらっており、自賠責用のものを余分に1通作成してもらうだけであり、さほど手間とは思わない。
弁護士の印鑑登録証明は、弁護士会に行けばすぐに発行してもらえるので、こちらも手間とは思わない。

問題は、被害者(依頼者)の印鑑登録証明書だ。住民票の写しや戸籍謄本と異なり、弁護士が職務上請求で取ることはできず、依頼者に役所で取ってきてもらう必要がある。
印鑑登録をしていない場合、わざわざ登録してもらう手間もかけてもらう必要がある。
弁護士が代理人として裁判手続きを行うのに、裁判所に出す委任状には印鑑登録証明書など添付する必要がないのに、自賠責の請求には必要というのも、また煩わしさを感じさせる要因である。

ところが、以前某SNSで、被害者請求を代理するとき、依頼者が印鑑未登録の場合、わざわざ印鑑登録してもらわなくても、保険証写し等の添付で本人確認できれば手続き可能であるという情報に接した。
この話は、複数の自賠社の案内パンフレットを確認しても載っていない。
また、インターネットで、「自賠責 被害者請求 必要書類」などと検索すると、手続きの方法が掲載されたサイトがわんさか出てくるが、前記の話が載っているサイトは見当たらなかった。

先日、日新火災への被害者請求で、依頼者が印鑑登録をしていない事案があった。その旨のメモを添えて、印鑑登録証明書でなく、代わりに運転免許証の写しを添付して請求したところ、確認の連絡等もなく受理された。
交通事故で後遺障害まで負い、損害賠償請求手続き全般を委任していただいている被害者に、余計な労力をかけさせずに済んだのは、とてもよかった。

同時に、本人の意思確認という目的を達するために、一般的には、印鑑登録証明でなく運転免許証の写し等で十分であり、被害者にとってより負担が小さいのだから、自賠社は、公式にそのように案内すべきのように思う。