比較的難度の低い上訴保釈
刑訴法改正(344条2項の新設)後、初めて上訴保釈を取り扱った。比較的難度の低い保釈事案なので、特に先例性が高いわけではない。
執行猶予期間満了後の薬物使用の再犯事案で、一審で1年2月の実刑判決を受けたところで受任した。一審で保釈されており、保釈保証金は150万円であった。
幸い家族の身元引受もあり、一審段階で薬物離脱の治療をきちんと受けてくれている方だったので、宣告刑の刑期や初入者であること、一審の出頭実績、保釈中の治療意欲などから逃亡のおそれが高くない上に、控訴審で原判決後の情状立証をするために通院を継続する防御準備上の必要性が高いことを指摘したところ、保釈保証金250万円で控訴保釈が許可された(津地裁松阪支決令和7年3月19日)。検察官は不相当意見で、抗告はなかった。
保釈保証金が原審の66%増しというのは高い方であるが、実刑事案にしては原審の金額が低かったように思える。
控訴棄却となったが、被告人質問で原判決後のきちんとした生活状況を立証したこと、全ての期日に出頭していたこともあり、保釈保証金350万円で上告保釈が認められた(名古屋高決令和7年7月10日)。
宣告刑の刑期や身上からして当然上訴保釈が認められるべき事案ではあるが、刑訴法改正後の1つの事例として報告しておく。